この記事は
「自営業とフリーランスの違いってなに?」
「自分が独立した際、フリーランスと名乗れば良い?」
「会社員とフリーランスや自営業の違いはなに?」
という悩みを持つ方に向けた記事です。
フリーランスや自営業という言葉を耳にする機会はありますが、実際にどのような就労形態であるかを正確に理解している人は多くありません。
企業や組織に雇用されている側から見ると、その実態や働き方の特徴は漠然としています。また、業界や職種によってはフリーランスや自営業と関わる機会が限られることから、働き方についての実情も広く知られているわけではありません。
この記事では、フリーランスと自営業。そして会社員との違いについてご紹介し、どんな働き方ができるかご紹介します。最終的にはフリーランスと自営業の違いについて理解し、自分が独立するときにはフリーランスと自営業のどちらを名乗れば良いか、使い分けができるようになることを目指していきます。
それでは、フリーランスと自営業の違いについてご紹介していきましょう。
目次
フリーランスと自営業の定義
まずはフリーランスと自営業の違いについて定義や歴史的背景から紐解いていきましょう。
フリーランスの定義
フリーランスは企業や組織に所属せず、契約によって仕事を請け負う就労形態を指しています。企業に所属しているわけではないので、働く時間や場所を自由に決めることができます。ICT環境の普及により広まりつつある働き方で、自宅やカフェ、シェアオフィスやコワーキングスペースで働くのが一般的なワークスタイルです。中には旅をしながらフリーランスとして働いているフリーランサーもおり、新世代の働き方として注目を集めています。
会社員など、組織に所属して働きながら副業としてフリーランサーとして活動している場合もあるため、かなり広範囲に渡って使用されている働き方といえるでしょう。
フリーランスは誰でも名乗ることができますが、企業に属さずに収入を得る場合は納税のために確定申告を行う必要があります。そのため、税制上のフリーランスの扱いは「個人事業主」として分類されます。
自営業の定義
自営業は「自ら生業を営む」という語源の通り、自分自身で生活の糧を得るような働き方を指します。元々は農業や漁業など仕事と生活が密接な関係にあった業界で個人事業主として事業を行なっている人を指していましたが、法人化していない個人事業主を総称して自営業と呼ぶようになりました。
祖父や両親などの親族が創業した企業を受け継いでいる場合は自営業を名乗っている場合がありますが、厳密には法人化していない事業主を指す用語で、法人化している場合には数人の会社でも自営業ではなく「経営者」と呼ばれます。
フリーランス・自営業の成り立ちや歴史
フリーランスの語源は「自由な槍」で、中世ヨーロッパで戦のたびに領主と契約し、契約期間だけ戦に加わった領主や貴族に属していない兵士を指していた言葉です。
1990年代にアメリカで特定の企業に所属せずに個人で仕事を請け負っていた人材をフリーランスと呼ぶようになり、2000年に政府に提出されたレポートでフリーランスの名称が使用されたことから一般に定着するようになりました。アメリカでは、就業人口の4人に1人が何らかの形でフリーランサーとして就労していることから、広く使われています。
日本では1990年代以降、ITバブルによってインターネットが普及したのがきっかけでIT業界を中心にフリーランサーが増加しました。そして2010年代に入るとITの専門知識がなくても場所にとらわれずに働く環境が整いました。これによりインターネット広告やデザイン、ライティングなど、IT分野から派生した分野でも働く機会が増えました。さらに近年は副業の推進やクラウドソーシングのマッチングサイトの普及などもあり、働き方の一つとして定着しつつあります。
自営業は古くから定着している働き方で、かつての日本では自営業者が就労者の多くを占めていました。1953年の調査では全体の25%が自営業主、42%が雇用者、残りの33%が自営業主の家族従業者でした。しかし、高度経済成長に伴い企業の組織化が進むと自営業主の吸収や合併も行われるようになり、事業者数はどんどん減少していきました。
そして2009年には雇用者が86%まで増加し、一方で個人事業主は11%まで低下。さらに家族従業者は3%にまで低下するなど、社会構造が自営業主中心の社会から雇用者中心の社会に大きく変化していきました。
会社員とフリーランス・自営業の違い
続いて、会社員とフリーランス・自営業の違いは何なのかをご紹介していきましょう。
労働形態の違い
会社員とフリーランス・自営業が最も異なる点は労働形態の違いです。
会社員は雇用契約によって企業に雇用されます。労働基準法に定められた範囲内で作成された就労規則に従って指揮命令を受け、業務を遂行していきます。
成果を上げられるかどうかによって昇進や賞与への影響はありますが、きちんと出社して業務命令を遂行していれば、毎月決まった日に必ず給料が支払われることが法律で義務付けられているため生活は安定します。
また景気が悪化しても直ちに解雇されることはないので、ある程度身分としても保証されているといえるでしょう。
一方でフリーランスや自営業は契約によって業務を受託し、成果物を納品する事で対価が支払われます。つまり、仕事をしているだけでは対価は発生せず、成果物を納品しなければ報酬が発生することはありません。仕事を受注できるかどうかは、本人の能力や人脈などに左右されます。
業界によっては景気が悪化すると仕事が発注されなくなるため、仕事が無く収入が得られない状況に陥る可能性があります。
また、会社員の場合は福利厚生が充実しています。例えば厚生年金は企業負担で支払われ、健康保険は企業が加入している健康保険組合の保険が使用可能で、その分だけ可処分所得が増えます。
しかしフリーランスや自営業の場合は年金は国民年金に加入し、健康保険は国民健康保険の加入となるため、掛け金の全額が自己負担となります。
働き方の違い
会社員の場合は、就業規則によって決められた場所に、決められた時間に出社して仕事を行います。しかし、フリーランスや自営業は場所や時間を決められていることはありません。店舗運営を行う場合には営業時間を決める必要がありますが、その場合でも時間の判断は自分で行う事ができます。
一番大きな違いは「仕事の進め方について命令されるか否か」です。会社員であれば使用者(雇用主)の命令を受ける事が前提で入社しますが、フリーランスや自営業は業務命令を与える側の人間がおらず、自分の判断で仕事を進めていく事ができるのが特徴です。
どちらの働き方が向いているかどうかは人によって異なりますので、自分自身がどのような働き方を望むかによって会社員かフリーランスや自営業かを選択していく必要があります。
「自分はフリーランス?自営業?」と迷ったら
会社を辞めて独立した場合、自分はフリーランスを名乗れば良いのか自営業な取れば良いのか迷うこともあるでしょう。この章では、フリーランスと名乗るか自営業と名乗るかの使い分けについてご紹介していきます。
自由な場所・時間で働くのがフリーランス
開業届を出して個人事業主として働いている場合には、自営業でもフリーランスでも自分の望む働き方を名乗ることができます。
場所や時間にとらわれずに仕事をするのであればフリーランスと名乗るのが良いでしょう。フリーランスはカフェや自宅、シェアオフィスなどその日の気分によっても自由に働く場所を変えることができます。人によっては旅をしながら仕事をしている場合もあり、このような自由なワークスタイルを希望するのであればフリーランスと名乗るのが適しています。
働く場所が決められているのが自営業
税制上、法人化している場合は個人事業主と名乗ることはないのでフリーランスではなく自営業と名乗っておくようにしましょう。
また、個人事業主であっても働く場所や時間がある程度固定され、人を雇用して事業を進めていく場合も自営業を名乗るのが良いでしょう。製造業や飲食店など、拠点や店舗を構えて人を雇用して働く場合、経営者的な要素も求められることになります。個人で自由に働くというイメージとはずれが生じるため、フリーランスという表現が適していると言い難くなります。
さらに、金融機関などで融資を受ける際にはフリーランスと名乗ってしまうと仕事のイメージがつかないばかりか、与信能力が低いとみられてしまう可能性があるので自営業と名乗っておくほうが無難です。
自分の希望するワークスタイルは?
フリーランスと自営業のどちらを名乗ると良いかは、自分自身がどのようなワークスタイルを希望するかによって選択するのが良いでしょう。
法人登記を考えておらず、働く時間や場所に縛られたくないと考える場合にはフリーランスと名乗るのが一般的です。逆に、法人として事業拡大を目指しており、拠点や店舗を構え、決められた時間で働きたいと考える場合には自営業を選択するのが良いでしょう。
業種によるフリーランス・自営業の分類
業種によってフリーランスか自営業かの違いはあるのでしょうか。この章では業種によるフリーランスと自営業の分類についてご紹介していきます。
クリエイティブな仕事はフリーランス
デザイナーやイラストレーター、ライターなどクリエイティブな仕事は時間や場所にとらわれずに働くことができる職種です。また仕事を進めていく上では、自分自身のクリエイティビティが仕事の成果を左右することや、人を雇用して仕事を進めるということがあまりないことから、フリーランス的な働き方であると言えるでしょう。
IT関連の職種はフリーランス
IT関連の職種にはコンサルタントや、システムエンジニア、プログラマーなど多くの職種が存在します。 様々な職種の人々がそれぞれの役割を果たすことで一つの大きなシステムを作り上げていきますが、実際の現場では別々に仕事を進めていきます。企業に属さずに個人で仕事を受ける場合には、納期に間に合いさえすれば働く場所や時間を自由に設定できることから、 IT関連の職種はフリーランス的な働き方であると言えるでしょう。
製造業は自営業
製造業は、拠点に生産設備を設置して生産活動を行います。規模が大きくなると人を雇って生産を行うことから経営者的な働き方を求められます。このような働き方は時間や場所が自由でもなく、経営者の要素も含まれていることから、自営業的な働き方と言えるでしょう。
カフェ・飲食業は自営業
カフェや飲食店などは店舗を構え、営業時間を設定して事業を行います。また、多くの場合は人を雇用して授業を進めていくことからも典型的な自営業のスタイルといえます。 しかし最近では、店舗を持たずにパーティー会場での調理専門の料理人も出てきました。このような働き方はフリーランス的な働き方と言えるので、 今後はカフェや飲食店のあり方やワークスタイルも変化していく可能性があります。
士業はワークスタイルによって自由
弁護士や公認会計士、税理士などの士業は事務所を構えて、開業時間を設定するのが一般的です。この点から考えると自営業のような働き方といえます。しかし最近は、インターネット上で案件を募集し、オンラインで相談業務を進める士業関係者も増えています。
地域密着型で事務所を構えて開業する場合には自営業と言っても過言ではありません。また、インターネット経由で仕事募集し、時間や場所にとらわれずに働くフリーランスと名乗っても問題ありません。
したがって、士業の場合は自分のワークスタイルに合わせて自営業と名乗るかフリーランスと名乗るかを自由に決めると良いでしょう。
まとめ:フリーランスと自営業の違いはワークスタイル
どのようなワークスタイルが向いているかは人によって異なり、どんなキャリアプランを描いているかによってもます。
自分自身の希望するワークスタイルやキャリアプランに応じて、柔軟に働き方を決定できるように普段から意識して仕事をしておくことをお勧めします。